令和6年度からトラックドライバーの労働環境改善を目的に時間外労働の上限規制が始まった一方、輸送能力の不足による物流の停滞が懸念されています。
持続可能な物流の実現に向けて、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主・消費者の行動変容が求められており、また、本年4月1日より「物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)」が段階的に施行されています。そのなかで、荷主がトラック輸送の効率化のために取り組むべき規制的措置(努力義務や義務)について、ご案内します。
2025年4月~全ての発荷主(貨物を送る側)・着荷主(貨物を受け取る側)に対し、物流の効率化に向けた3つの努力義務が課されました。
①積載効率の向上等
- 余裕あるリードタイムの設定
- 繁閑差の平準化による発送量・納入量の適正化
- 配車システム導入による配車・運行計画の最適化
- 複数荷主の貨物の積合せ、共同配送の実施 等
②荷待ち時間の短縮
- トラック予約受付システムの導入等による時間帯の調整
- 混雑時間を回避した日時指定
- 出荷・納品日時の分散 等
③荷役等時間の短縮
- パレット等の輸送用器具導入による荷役等の効率化
- 商品識別タグ導入等による検品の効率化
- バース等の荷捌き場の確保による環境整備
- フォークリフトや荷役作業員の適切な配置による荷役等の効率化 等
【参考】トラック・物流Gメンによる是正指導(貨物自動車運送事業法における取組)
国土交通省では、トラック事業者が関係法令に違反する原因となる行為(長時間の荷待ち等)をしている悪質な荷主に対し、関係省庁と連携して「働きかけ」や「要請」等を実施しています。
2026年4月(予定)~前年度の取扱貨物重量が9万トン以上の荷主(特定荷主)には物流効率化の取組が義務化されます。
①中長期計画の策定(実施する措置・具体的な内容や目標・時期等)
②定期報告の提出(判断基準の遵守状況・関連した取組の状況・荷待ち時間等の状況)
③物流統括管理者の選任(事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者)
- 個々の事業者(法人)ごとに、第一種荷主・第二種荷主(発荷主・着荷主)それぞれの立場で前年度の取扱貨物の重量を算定し、9万トン以上の場合は特定荷主に該当します。第一種荷主と第二種荷主の合計重量ではありません。(例)第一種荷主9万トン/第二種荷主10万トン→ともに特定荷主に該当(特定第一種荷主、特定第二種荷主に指定)、第一種荷主4万トン/第二種荷主5万トン→ともに非該当
- 特定荷主の効率化の取組が著しく不十分である場合、国から勧告を受けることがあります。
- 勧告に従わない事業者は、事業者名の公表、命令、さらに罰則が科されることがあります。
<特定荷主のスケジュール> ※令和7年7月時点の想定
2026年 4月 |
法律の施行 |
2026年 5月末 |
特定荷主の届出(電子申請)~ 指定手続 指定後速やかに物流統括管理者の選任届出 |
2026年10月末 ※初年度のみ。次年度以降7月末を想定 |
中長期計画の提出 |
2026年 秋頃 |
判断基準に関する調査・公表の実施 |
2027年 7月末 |
定期報告の提出 |
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参考
中小企業向けの物流効率化の取組(設備投資)に対する主な支援策
①中小企業省力化投資補助金
売上拡大や生産性向上を目的に、人手不足解消に効果のある製品や設備の導入、システム構築等を補助。補助率・補助上限額は、申請する型、従業員数等により変動。 (例)無人搬送車(AGV・AMR)
中小企業省力化投資補助金HP
②IT導入補助金
労働生産性向上を目的に、業務効率化やDX等に向けたITツールの導入を補助。補助率・補助上限額は、申請する枠・類型、従業員数等により変動。 (例)トラック予約受付システム
IT導入補助金2025HP
※誌面に応じて「トラック・物流Gメンによる是正指導」「特定荷主のスケジュール」「補助金情報」を省略してご利用ください。